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筈彦(はずひこ)の早気は更に進行していた。もはや彼の早気は、「早気」という漢字二文字で片付けられないような恐ろしい発展を遂げていた。 「…ねえ。とりあえず最初から整理してみようよ。」 「うん。」 「ええっ…と。まあ、最初は『会』がだんだん短くなりました、と。でだんだん『会』が無くなっていきました、と。ここまでで何か?」 「はい、間違いありません。」 「はい。で、どんどん気が焦って悪循環にはまり、エスカレートしてレンタルDVDを瞬時に返却したり、乗ったタクシーのメーターが高速回転しだした、と。そうだよね?」 「はい、あってます…。」 「で…。今回のなんだけど。…これは一体どういうことなんだか一から説明していただくのがよろしいかと…。」 「うん。まあね、俺だって別に尚(たかし)や皆を困らせたいなんてこれっぽっちも思ってないんだ。」 「わかる、すごいわかる。ただ、正直筈彦の早気は危険すぎるんだわ。まあこれを今尚早気と呼ぶかっていう気もするけど。」 「悪い。ほんと申し訳ない。でもまさか俺もオアフ島が日本まであと500kmの距離まで近づいてくるとは思わなかったんだ。」 「………。」 「………。」 「ていうかさ…。カップ焼きそばにお湯入れたままソース加えたり、サザエさんの落ちが読めるのとかはもういいよこの際。何地球の地殻変動早めてんの?」 「いや、もうほんと何がなんだか…。悪い夢でも見ているようで。」 「ホント夢ってことにして。おかげで日本とアメリカの政府困惑してるから。」 「タクシーメーターの件のあたりからおかしい気がしてたんだよね。なんか自分の外にも影響を及ぼし始めたっていうか。」 「いやまあおかしいのはほぼ最初からなんだけどさ。でどうすんだよ、お前のその面白い早気に食いついて大学にものすごい数のマスコミがきてるぞ。」 「まあこれを機にタレントってのも悪くないよね。尚マネージャーやってよ。」 「あの、このままお前の近くにいるのがどうも怖いんだけど…。なんかもの凄い勢いで歳とっていくとかない俺?」 「んー、まあそれは冗談としてさ。」 「俺は最近お前の全てが冗談でできていると思っている。」 「そんな人をバファリンみたいに言わないでよ。」 「バファリンだってせいぜい二分の一どまりだよ。一緒にすんな。失礼だろバファリンに。」 「………。ああ…。なんかもう機嫌損ねたよ俺。そうだな〜、活火山の活動とか早めちゃおうかな〜…。」 「今のお前ドラクエに出てくる魔王より性質悪いよ…。おい、筈彦いつまでもそのままの状態でいるつもりなのかよ。っていうか言動から察するに、なんかお前その変な能力利用しようとしてない?」 「いや嫌ですよ、つらいっすよこんな状態!どこの世界に早気で政治問題引き起こして喜んでるやつがいるんだよ。」 「まあとりあえずこれを早気としよう、仮に。もはや原因は弓道などではない気がするのだが俺は間違っているだろうか?」 「早気なら原因は弓道でしょ。手の届く目標を設定して少しずつゴールを目指せみたいなこと言ってたのは尚じゃんか。」 「確かに言ったけど…。じゃあ今のお前にとっての手の届く目標って何なの?」 「え…?」 「…。」 「日帰りでハワイ、とか。」 「うぉい!やっぱ利用する気かよ!」 ちなみに、筈彦君は後に弓道部主将を務めるそうです。どうなってしまうのでしょうか。 (注)この文章における「早気」は、あたりまえですがフィクションです。 |
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